今日も明日もそばにいて
ふぅ、こういった場所の女子トイレはどこも混んでるものなのよね。特に上映時間後だから。個々に慌ててないっていうのも時間を取ってる気がする。
きっと神坂君を待たせちゃってるな。
あれ…?ロビーに神坂君の姿は見当たらなかった。私の方が早かったのかな。神坂君は…まだ居ないようね。
ここ…暗い中にブルーの明かり。白いシート。この色使いは綺麗よね…。
あ、神坂君。
「すみません。何だか混んでて。待ちました?よね」
「ううん、そうでも無い」
男性トイレが混む事もあるんだ。
あー、小さい子供も、今日は多いもんね。子供だと特に時間が掛かっちゃうか。
「グッズ売り場みたいなとこもありますが、行ってみます?」
「う〜ん。私はいいかな。あ、でも神坂君が、ぁ、…行きたいなら行こう?」
「ハハハ、3回目。人でごった返してそうなので俺もいいです。
じゃあ…、ご飯にでも行きますか」
「うん、そうね。ねえ?ここの入場料…」
「あ、いいです」
「でも、そんな訳には。そもそも、ササッと買ってしまうから…」
「え?俺が悪いんですか?」
「違うけど。じゃあ、ご飯代は私持ち。そうさせて?」
「…解りました。で、何が食べたいですか?」
「空いてるところ」
「あ、ハハ。解りました。…では、ざっくばらんな所に行きましょうか?」
クイッと飲む仕草をした。
「うん、そうね。それが楽でいい」
空いているところ、つまり待たずに直ぐ入店出来るお店。そんなつもりで言った。
何も迷う事なく居酒屋さんへ直行した。いつもとちょっと違うのは、少しお洒落なお店だった事だ。こんなお店……突然入って、偶然にもよく空きがあったものだ…。
「さあ、食べましょうか。あ、飲みましょうか」
この間の事もある。今夜は自分家にちゃんと帰れる程度の飲み方にしておこう。
適当に料理をチョイスして注文した。
「こ、…柊一君、今日、ごめんね、有難う。ドキドキしちゃった」
今のはセーフにしておこうか。
「家に帰ったら、こ、…柊一君が居るんだもん。びっくりしちゃった」
さっきのがセーフだから今のもセーフか。
「それにね、うちでね、男の人が寝てるって無い事なの。ん〜。勿論、部屋に入れた事もね」
「へえ、初めてですか、俺が」
「うん、そう」
…あの部屋でが初めてなのか、それとも、部屋に男を入れる事自体が初めてだったのか。
しまった…。また、余計な事を口走ってしまった。どうも神坂君と飲んでると気が緩むのかな、…酔ってしまう。
「あ、の…」
「送りますから大丈夫ですよ。好きなだけ飲んでください」
別に飲みたい訳じゃないけど。そう言ってくれると安心しちゃう。言葉って大事…。
……自然と頼れる男だ。なんて、思っちゃう。