今日も明日もそばにいて


「そろそろ帰りましょうか」

「うん」

店を出た。


「あ、ねえ?駅こっちじゃない?」

「凄く人が多いです。送りますから、こっち、タクシーで帰りましょう」

…んー。ほろ酔いで電車でギュウギュウは嫌かもだ。タクシーなら楽に座って帰れる…。

「…うん」



「大丈夫ですか?」

「…うん」

もう、うんしか言わなくなっていた。
タクシーに乗った。行き先を神坂君が告げ、シートに深く座った。

…。

別に寝ている訳じゃない。うっかり柊一君と呼べなかったらまずいとか、そう思って話さない訳じゃない。
何だか無言だった。


沈黙の中、タクシーは家にたどり着いた。
…もう、着いちゃった。

え?…神坂君?…。一緒に降りてしまったけど。
…まあ、うちからなら、歩いて帰れる距離ではあるけど。

「部屋まで送ります」

階段を上がった。セキュリティーのしっかりしたマンションとは違う。
普通に階段を上がり、3階の部屋に向かう。
エレベーターは無い。3階建ての3階。
一応、女子だから?1階は避けたくらいの事だ。

「どうぞ、中に入ってください」

部屋の前まで来た。カチャカチャ、鍵穴に差し込み開けた。
ゆっくりドアを開けた。

「神坂君、…珈琲に付き合って?」

「…4回目です。…夜ですよ?お邪魔して大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫よ?…入って、さあどうぞ?」

「では、失礼します。…いいんですね?遠慮はしませんから」

「どうぞ?」

一度入ってる、遠慮なんて、する必要は無いのに。…え、んりょ…何に?
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