今日も明日もそばにいて

「…ねえ?…会社では内緒にしてよう?」

「え?」

「神坂君の為には、その方がいいと思う」

「いや、俺は隠すつもりはないけど」

「えっ、だけど…」

「…うん。女子社員の事を心配してるんだろ?」

「…私、神坂君とは、ただ挨拶程度の会話をしてるだけだって説明してあるの。そう言ったばっかりなの…。関係とか無いから、大丈夫よって…」

「…うん。その時はそれで収めたんだよな」

「うん。それに、神坂君はずっと彼女が居る事になってるでしょ?」

「うん、…そうだけど」

「だったら、その情報のままで、ね、隠しておこう?」

「会社では今まで通り?」

「うん、今まで通り」

…。

「少し様子を見よう?」

「俺は…」

「ね、そうして」

だって、ただつき合ってますみたいな噂では済まなくなる。
私が年齢が高いから。きっかけは?何?て、探られる…。当然、結婚するんでしょって、先まで…、噂に勝手に尾鰭が付いてしまうだろう。例えば、…子供ができたの、なんて言って、繋ぎ止めてるんじゃないかとか。シた事の責任を取ってだとか。…はぁ。
ましてや、直ぐに終わったとか、…そんな事になったら…。神坂君に酷い噂が立ちそうだもの。つき合うだけつき合って、挙げ句、アラフォー女を捨てた、とか…。
あ゙ー、考え過ぎかな。…はぁ。
私は構わないのよ。噂があまりにも辛くて堪えられないなら、最悪辞めれば済む事だから。
だけど男の人は違うもの…。
転職はそうそうするものではない。今後も同じ職場で働かなければいけない事を考えたら…。

良からぬ噂が人事に知れたら、この先にだって影響する。
実際、酷い事をした訳では無くても、噂が立てば色々と事実確認をされるだろう。
痛くも無い腹を探られた挙げ句、噂の方が勝ってしまって信じて貰えなかったら不幸だ。
マイナスイメージが一生付き纏う。
…社内恋愛は難しい。でも、社員にとっては、社内は出会いの場でもある、のか…。

「…解りました。何かあったら志野田に声掛けて?」

「志野田君?」

神坂君じゃなくて?

「はい。勿論、実季さんのことは俺が護ります。だけどいつも側に居られる訳じゃない。俺が居ない時とか、連絡が取れない時。対応してくれるように大丈夫にしておくから。
まだ詳しくは話して無いけど、俺の社内恋愛に協力してくれるって事になってるから。場合によっちゃ、あいつをつき合ってる相手にしていいようにもなってるから」

志野田君と私が?話はそんなことまで?…何気に手は打ってあるのね…。ちょっと?…え?もう?…おつき合いが始まる前から話してあったの?
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