今日も明日もそばにいて
「おい、俺も嫌だったんだけど、一応頼まれたから伝えておくぞ?」
「あ?何だ?」
最近やけに志野田と密だな。頼み事もしてるし仕方ないんだけど。
どうしても小声で話す内容ばかりで、その気もないのに、いつも顔が近くなるよな…。
「美香ちゃん、解るよな?」
「ああ、大谷さんだろ?」
事務の子だ。
…。
「ここ迄言ったら、何か解るだろ?」
…。別に…何から何まで意思の疎通を求めてる訳じゃない。はぁ。
「別に勿体つけなくていいから…、サッと言えサッと、何だ」
「お前に話があるんだと。仕事終わりに下のエントランスで待ってるから、時間貰えますか、だってよ。直接お前に言えばいいのにさ。まあ、そうしたらその時点で話どころかお前に断られるもんな。俺に言うとか、中々考えてるよな」
…。
「今日の事か?」
「だろ?」
「待ってる、って、俺の方が終わるのかなり遅いだろ?何時って指定も無いのか」
「ああ、そういや、言わなかったな。俺も聞かなかった、悪い」
「延々待つつもりなのか?」
「さあな〜。その方が避けられないと思ったんじゃないのか?時間決めてると、その時間合わなきゃ無理だ。話も聞いて貰えず、簡単に断られると思って決めなかったんじゃないのか?
ここのところ、お前の周辺がザワザワしてるから、ちょっと焦ったんじゃないのか?噂は噂だし。私も言っておかないと、誰かに本当に取られちゃう、って。ま、お前は、もう既に誰かのもんだけどな?」
…。
「今、ちょっと、雰囲気悪いんだ」
「花さんとか?なんで?…喧嘩でもしたか」
「…いや。喧嘩にもならない。空気が悪い」
「あれか、海和の事、引きずってるのか」
「そんな感じなのかな。疑われるような事は無いって話はしたけど。それから何も話さなくなって…特に言わないから解らない」
「で?そのままか?いかん、いかんぞ、神坂君それは」
…何ふざけてんだ。
「理由なんてな、あっても無くてもいいから、抱きしめて、こっちからごめん、て言え。
これで一発解決だ」
…本気で言ってないだろ?
そんな…簡単なことじゃない。実季さんはそんな人ではない。