今日も明日もそばにいて
「…嘘つき。ねえ、そう思わない?志野田君」

「まあ、まあ…、落ち着いてください。あいつにだって予測つかない事だってありますから。こういうことは特に」

「だって…。そうだけど…」

カフェ ブレイクオフ。
私はまたこのカフェで志野田君とお茶をしている。
今日はケーキセットにしてやった。請求は勿論後で神坂君によ!

「他社の女子が会社の前で待ってるなんて、そんな事までは俺にも解りませんよ」

社内だけの、あわよくば“記念”にしよう的な告白は、どんな形でなのか知らないが、余所様まで広まっていた。
今日、会社を出て、近くで落ち合うつもりが…。
神坂君は待ち伏せされていて、私は、また、志野田君に咄嗟に手を引かれ、歩いた。帰り道は同じだ。

道すがら疑問に思った。これって今回はしなくていいんじゃないの?って。普通にバラバラに歩いていて問題無い気がした。

「よし、っと。ここに居る事は連絡しました。
悩ませる訳では無いですが、今日の女子はちょっと手強いですよ?
納得する答えが無いと神坂帰して貰えないかも知れませんよ?長い取引先の関係者ですから。
記念が欲しくて来たのとは少し違うと思います。あ、携帯…、ちょっとすみません。…神坂からです。
杜咲さん、今日のご飯は俺としてくれって。どうやら長くなりそうですね」

…どうするかな。

「神坂君のそれは…『令状』なのね?」

レイジョウ?

「あ、確かに令嬢ですね」

読みが鋭いな…。取引先の社員だがまあお嬢さんだ。さすがにピンときたか。

「…はぁ。解ったわ。行きましょ?代金は神坂君に勿論請求よ」

会社関係者で手強いって言ってしまったから、やっぱ令嬢ってバレたか…。それにしても神坂の奴、杜咲さんにじゃなく、俺に伝えて来たりして…。一緒に居るからか。本人にだと長い説明が必要になるもんな。だから今は簡潔に俺にって事か…。
しかし、あいつのたった一言に杜咲さんは従うんだな…。本当に偉くなったもんだな、神坂も。

「志野田君?」

「あぁ、すみません、行きましょうか。ところで今日は何を食べる約束だったんです?」

「今日はスペイン料理よ。バルで飲みましょ?帰りの方向も同じ事だし」

そうなんだよな。お互いの部屋がそう遠くなかった事を知った時は驚いた。

「俺がちゃんと送り届けますから。よ〜し、飲みましょう」

「フフ、そうね。あ、手は繋ぐの?」

「いいですか?」

「振りなら振りらしくって事で、…この際徹底しなくちゃね…」

「はいっ!そう来なくっちゃです」

おずおずと手を握った。細くて長い、綺麗な指だ…やっぱ……綺麗だなぁ。前にも増して…艶っぽくなったっていうか、とにかく綺麗だ。それにどこか可愛らしいんだよな…。
…この様子が神坂の影響かと思うと、…くそ〜。…アイツと………ちっくしょー。

「ん?」

「いや、なんでもないです、ハハ」

心の声がだだ洩れだ。
よ〜し、飲むぞーー。
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