今日も明日もそばにいて
「どうしたんですか、急に」

いきなり、どうしたんだ…。

「辞めるって、長く勤めていると、寂しさみたいなものは確かにあるんだけど。女子社員って誰が居なくなっても…別に…」

…急にどうしたんだ。何を考えたんだ。

「辞めてしまえば、会社で色々気にしなくていいでしょ?勿論、今まで通り、つき合ってるなんて言わなくていい訳だし」

そういう事か。

「実季の居ない…知らないところで、誰にどんな風に迫られるか…解んないよ?実季はそれがいいんだ」

…。

「…今日も明日も明後日も…いつも…、また誰かに呼ばれて、告白されるまでの状況を見てろって言うの?…神坂君は優しいから、女の狡さに気がつかないで…、泣かれたら…慰めたって話を聞かなきゃいけないの?…待たせたからって…またご飯を一緒にするかも知れない。泣かれてしまうと、ただ一緒に居るだけじゃなく、…肩を抱くかも知れない。人の目から庇う為に抱きしめるかも知れないわ。
絶対無いなんて解らない…。優しさからするかも知れない事…。だったら…、彼女は居るって噂だけある方が良くない?
信じていても、頭では解っていても…知りたく無い。見たくない、聞きたくないのよ」

こんなにヤキモチ妬きだと嫌になる?面倒臭い?…重い?

「…逃げるのか?実季は何が恐いの?実季は俺を夢中にさせる、掛け替えのない彼女、だろ?
仕事は辞めさせない。本音は、何となくだって、まだ会社、辞めたくないと思ってるだろ?辞める必要なんかない。そんな事しなくても、こうして…週末だって平日だって、いつも傍に居る。…まあ、週末は、より濃い過ごし方だけどな。
告白なんて、いつまでも続く訳じゃない。会社で俺を思っている人間なんて、居ても高が知れてる。買い被り過ぎだ。もう終わったんじゃないかな」

…。

「辞めなくていい。まだ駄目って言うなら…現状でいいじゃないか」
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