冬のようなあなた
「さらさんっていつも人間関係で悩んでるよなー」
「人間の悩みは人間関係からだからね」
「アドラーか。でも、確かにそうよな」
どの教室も賑わっている中、この空間だけが穏やかで涼やかな空気が漂っている。
蒸し暑い日だというのにそれすら感じないほどだ。
「さらさんはさ、もっと心開いてみたらどうかな。素の自分をもっと出していいと思う」
こちらを見ないまま放たれた言葉だったのに私の胸には深く刺さった。よくわからないけれど、彼には何でもバレているようだった。素の自分を隠していることも心開くのを怖がっていることも。
「なんでわかるかなぁ。魔法使いか何か〜?」
「ははっ。そうかも」
おどけて誤魔化してもきっとわかっているんだろうなと思うと不思議な気分だった。クラス離れる前も言葉をあまり交わしていないし、こんな話しなんてしていなかったからいつばれたのかわからない。