ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
それは更衣室でも同じだった。特に終業後の時間帯は足を運ぶのですら躊躇ってしまう。

中では着替えをしている女子達がいろんな噂をしていて、これまでは気にならなかったことも、やはりどうしても気になってしまう。



「副社長がさ…」


ピクンと反応して耳がダンボになってしまう瞬間、自分とのことがバレたんじゃないだろうかと心配する。



「今日も愛想悪くてヤだったー」



……悪いけどホッとした。
自分とのことが知れ渡ったとしたら、ここで服を着替えるのも遠慮したくなるだろう。



「あの人っていつも愛想悪いよね」


冷血漢と噂されてる彼は、オフィス内ではあまりいい評判を聞かない。

私は真綾から商談の影の功労者が大輔さんだと聞かされてるから、絶対にそんな人ではないと信じているんだけど。



「あんた達が思うような人じゃないよ、副社長は」


バサッとブラウスの埃を落としながら言い返した聖。
同じ話を真綾に聞かされてるから黙ってられなくなったんだと思う。


「どういう意味よ」


当然噂し合ってた子達は聞いてきた。

物事に動じない性格の聖は、「別にそういう人だと決めつけるのが変だって言うだけ」と流した。


(これじゃーまるで、聖が彼女みたい)


本来言い返すのは私の役目なのに、目立つのがイヤだから言い出せない。

実際の彼に甘やかされて優しくされてるのは、間違いもない私なんだけど……


< 172 / 191 >

この作品をシェア

pagetop