ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
「羨ましいな」…と話す聖の顔もほんのりと赤い。自分の過去の恋愛経験を重ね合わせてるんだろうか。


「聖だっていずれ羅門さんに迫られるんじゃないの?」


下から窺うように見た。
メガネからコンタクトに変えた聖の顔が、瞬くうちに赤く染まっていく。


「そ、それは暫くないから!」


珍しく狼狽えた。
付き合いだして間もない筈だけど、既に迫られてしまったとか……?



「今度は聖の話も聞かせてね」


駅に着いたから「またね」と言って別れた。
電車に揺られながら大輔さんにメッセージを送ってみる。


『聖と羅門さん、上手くいってるみたいよ』


迫られたのかどうかは知らないけど、あの様子ならその日も近いと思う。


『そうか』


相変わらず短い返事だ。


『今どこいるんだ?』

『電車内。もうすぐ駅に着くところ』


送信を押したところで電車が止まる。
押し出されるようにホームへ降り立った時、短い電信音が鳴った。



『会いたい』


畳み掛けるように迫るという話を思い出した。
今日もしも泊まるような展開になってしまったら、次はもう飽きられてしまうかもしれない……


『ゴメンナサイ。今日は帰らせて下さい』


土下座するスタンプまで貼り付けた。
この画面を見たら、彼がガッカリするんだろうなと思いながら送る。



『じゃあ明日な』


いいか?とか聞いてはくれないらしい。


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