ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
「折角だから遠出しようかと思う。車酔いはしないか」


口調だけは相変わらず抑揚がない。


「し、しません」


そのギャップを面白く感じつつ社長の顔に向いて答えた。


「じゃあいいな」と応じる声があり、運転を再開したのはいいんだけど、その乱暴なことと言ったら怖いくらいで。


「…しゃ、社長、もしかして運転はあまりなさらない方なんですか?」


シートベルトしてても揺れがひどいのなんのと言ったらない。


「ああ、普段は大輔の車でオフィスまで来るから」


半年ぶりくらいかな…と、驚くべき真実を明かす。


「う、運転替わります!」


思わず絶叫マシーンに乗ってる気分に陥った。
社長は頑として運転を替わろうとはしてくれず、結局その荒い運転に揺られたままで目的地に到着した。





(良かった。生きてる……)


大袈裟と思われるかもしれないけど、本当にヤバい運転だった。

週末だから走行する車の量が少なくて良かった。
これが平日だったら、確実にパトカーに注意されている。



「降りよう」


涼しい顔つきで言う社長に促されて外へ出ると、視界の中に広がる景色は雄大で素晴らしいものがあった。


「……いい眺めですね」


小高い山の頂上付近に設けられた駐車場から見下ろす景色は絶景だった。

麓から海に向かって流れている一筋の川があり、その川の中流付近には黄金色に染まる田園風景が広がっている。


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