ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に 2
月曜日の朝、私はソワソワする気持ちを抑えながら社長室のドアをノックした。


「どうぞ」


副社長の大輔さんの声が聞こえ、気を引き締めてドアを開けた。


「おはようございます」


ドアの外で頭を下げてから入室する。
いつもの順番で二人と挨拶を交わした後、今日のスケジュールの確認を行う。


話しながらさり気なく社長の様子を観察する。
週末一緒に過ごした時とは違う、全く別人のような顔つきでいる彼。

無表情に近い感じで話す姿は言葉数も少ない。
車内でもそんなに多く話す方ではなかったけれど、明らかに雰囲気が今とは違った。




土曜日、前言通りに社長は私のことを聞かせて欲しいと言った。
だから生年月日や学歴を教えようとしたんだけど。


「そんなことは履歴書を見てるからわかる」


そう言われ、じゃあ何を言えばいいのかと迷った。


「君の宝物は何?」


うーん…と悩んでいた私に出された助け舟にもならないような質問。


「宝物……ですか?」


これまた難しい質問だわ。

宝物というと如何にも物品であるかの様に思うけれど、私の場合はやっぱりコレかな…と、あれこれ考えた末に答えを出した。



「家族とか友人……ですね」


蛍や聖の顔が思い浮かんだ。
二人に今日の話をしたらどんな顔をするだろうかと思っていた。


「家族と友人ね。他には?」


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