テレビの向こうの君に愛を叫ぶ

「あぁぁ。また負けたぁ!紘那ちゃんちょー強い」



モンスターを育成してバトルをするゲームで、私はなぜか蒼君と戦っている。
負けず嫌いな蒼君とはこれで5回戦目。
彼は悔しそうに顔を歪めてふてくされていた。
自分で言うのもなんだが、私はこのゲームで負けたことが一度もない。


「蒼はほんまに諦め悪いなぁ。何回やっても変わらへんで!次俺な!」


隣で春翔君が私の袖を引く。
想像を遥かに超える訳のわからない状況に困り笑いをする私。
ふと気配を感じて振り返ると澪君が私を見下ろしていた。


「あー俺、今から飯作るわ。紘那ぁ、手伝ってぇ」


じーっと私を見ていた澪君がそう言って春翔君とは逆の袖を引っ張って、私を立たせようとする。


「おいおい。お客さんに手伝わせるのかよ」


悠君が呆れた顔で澪君を見つめた。
澪君はぷくっと頬を膨らませて「ねぇ」と私を引っ張り続ける。
私はそんな澪君が可愛くて仕方なくて、ついつい言うことを聞いてしまう。


「俺負けたから、俺が澪ちゃんの手伝いするよ。紘那ちゃんは春と遊んであげて。…それでいいよな、澪ちゃん」


よいしょと立ち上がりながら言ったのは蒼君。
蒼君は私の肩を両手で押して座らせると、澪君に向き直った。


「別に。いいもん」


澪君は蒼君に連れられてキッチンに入っていく。
その途中、何度も何度もこちらを振り返っていた。


「なぁなぁ、バトルしようや!」


春翔君に再び袖を引っ張られ、私はゲームの画面に視線を落とした。
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