テレビの向こうの君に愛を叫ぶ

「よかったんかぁ?あれ、高く売れたで、きっと!!」

あれからもう1週間が経つのに、春はいまだに俺に会うたび、口を膨らませながらあの動画のことを言う。

「いいんだよ。あまり酷い仕打ちをして、紘那に仕返しされたんじゃ困るから」

俺はいつもこう返す。

「全く、甘いんだよ澪は」


あの後、倉持緩は、あの写真は自分からくっついて行って、振り払われるほんの一瞬を撮られたものだと認めた。
そうなったおかげで、あの週刊誌の記事は嘘だったということになった。
俺の完全な潔白が証明されたわけである。
紘那もその報道を聞いてホッとしてくれているらしいし、なんとかいい方向に向かってきていると思う。
こうなれたのも、協力してくれたメンバーのおかげであるのは間違いない。


「ありがとう」


本当に無意識に俺は呟いていた。


「なんだよ、らしくねーなぁ」


蒼にわしゃわしゃと髪を撫でられる。
さっきセットしてもらったばっかなのに。


「澪ちゃん素直やね」


「雪降るんじゃね」


春と悠もそんな俺たちを見て笑っていた。
今日の撮影は『男子高校生の新学期』がテーマで、俺たちは制服を着ていた。
この様子を外から見たら、きっと微笑ましい高校生たちに見えるだろうか。



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