スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-


まさかと思いつつも、どこかでもう確信していまっている自分がいて。

だからこそ、息もできない程に身じろぎひとつままならず。


「そうですか。それでご用件は?」

「これを届けるようにと」


言って、彼女は歩き私の横を通り過ぎて。

識嶋さんに紙袋を渡すと、私を、振り返り。


「……美織、ちゃん」


名を、口にした。

まつ毛の長い可愛らしい瞳を驚きでいっぱいにして。


「……えっと、ここに住んでいるの?」


戸惑いがちに首を傾げた優花ちゃんは、探るような視線を私に送る。

けれど、私は未だ固まったまま、答えることもできずに優花ちゃんを見つめ返すことしかできなくて。

だって、わからないのだ。

彼女がここにいるのは何故か。

識嶋さんとはどんな関係なのか。

私が今、取るべき対応は何が正解なのか。

……いや、本当はひとつ思い当たる可能性がある。

けれど、そうであってほしくないという思いが、私の判断を鈍らせていた。



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