溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~


階数表示が『5』を差すのを眺めながら、さきほどの光景を思い出した。
 
緩いウェーブのかかった背中までの髪と、攻撃的とも思えるビビッドオレンジのワンピースが印象的だった彼女は、彼のことを「生吹」と呼び捨てにしていた。
 
知り合いだろうか? というか、腕を組むってだいぶ親密じゃない?
 
もやもやしたものが込み上げてくる。エレベーターの扉が開き、ガラスの壁越しに雑然としたオフィスフロアが広がった。ああ、仕事の時間だ。
 
カードリーダーにIDカードをかざす。ピッと鳴った音を合図に、私はスイッチを切り替えるように気持ちを仕事モードに移行した。





やっぱりというか、当然というか、昼休みの会議室の話題は瀬戸生吹一色だった。

「見た!? 今朝のエース様」

「見ましたよー! 誰ですかあの派手な服の女!」
 
正午のチャイムが鳴ると同時に、五階の中会議室は休憩室へと姿を変える。弁当やコンビニの袋を持って、各部署の女性社員が長机に昼食を広げるのだ。
 
おのおのネットワークを持つ女性たちが、弁当をつつきながら情報交換をはじめる。といっても基本的にオープンな雰囲気で、上は55歳から下は23歳まで、様々なメンツが日替わりでおしゃべりを楽しんでいた。
 
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