溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~


「ね、西尾先輩」と同意を求められ、私は「そうだったかなぁ」と首をかしげた。芽衣ちゃんが「何すっとぼけてんですかぁ!」と責めるように私を見る。
 
ていうか芽衣ちゃん、お口が軽すぎない? そう目線で訴えても、彼女にはまるで伝わらない。

「だから今朝の子は少なくとも彼女じゃないですよ!」

「えー、じゃあ誰なのよ」

「可愛い子でしたよねー」
 
本当、誰なんでしょうか。
 
きっとこのなかの誰よりも、私が一番気にしている。
 
昼食を終えて仕事に取り掛かっても、今朝の映像はやっぱり心の片隅に引っかかっていた。ふとした瞬間に脳裏によみがり、そのたびにため息がこぼれる。
 
今朝は余裕を持って家を出てきたのに、瀬戸くんが出社してきたのは就業開始時間ぎりぎりだった。あの髪の長い子と、三十分近くも話をしていたということになる。
 
ホワイトボードの行動予定表を見ると、瀬戸くんはいつものように外出中になっていた。いつもは身体の心配をするだけだけど、今日はなんだか気持ちが落ち着かない。
 
瀬戸くんの顔が見られなくて不安になるなんて、だいぶ重症だ。
 
自分でも想像していなかったくらい、私は瀬戸生吹に落ちているらしかった。


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