溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
「そのワンピース素敵ですね」
何気なく言った瞬間、瑠璃さんは驚いたように目を丸めた。小さな顔が、みるみる赤くなっていく。
しまった地雷を踏んだかなと思ったとき、彼女が身を乗り出した。
「そうでしょう! そうでしょう! これ、自分でデザインしたのよ!」
思いがけない反応に面食らった。
目をきらきらと輝かせた彼女は、年相応の顔をしている。さっきまで顎を上げて何階層も上から私を見ていたのに、女友達にでも話すようにまくしたてた。
「私、美大のファッション造形学科に通ってるの。この素材はイタリアから取り寄せたのよ。最大のポイントはこのスカートの切り返しでね、先生も褒めてくださって」
「瑠璃さんて美術大学に通われてるんですか? もしかして大樹さんと同じ?」
「そうよ。大樹は油絵専攻だけどね」
そこまで言ってから、彼女ははっとしたように口をつぐんだ。
「そんな話はどうでもいいのよ」
自分を落ち着けるように紅茶を口に運び、ごくりと喉を上下させる。華奢な両手で支えた特大マグカップは、彼女のちいさな顔を隠すほど大きい。
「生吹と別れてくれるのよね?」
話を戻されて、私はこっそりため息をついた。