溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
「瀬戸くんはなんて言ってたんですか?」
今朝の場面を思い出しながら尋ねる。あのとききっと、彼女は今と同じように瀬戸くんに私との別れを迫ったに違いない。
じっと見ていると、瑠璃さんはすいっと視線をずらした。
「生吹は優しいから、別れたくても自分からは言い出せないのよ。だからあなたから切り出して」
まるで子どもの主張だ。私はもう一度、今度ははっきりとため息をついた。
「お断りします」
彼女の眉間に深いシワが刻まれる。
「どうして?」
「どうしてと言われても……。別れるつもりがないので。それじゃあ、私はこれで」
席を立ちながら一口も飲んでいない紅茶に目を落とし、私は財布を取り出す。瑠璃さんが眉を持ち上げた。
「いらないわよ」
「いいえ、自分の分は自分でお支払いします」
千円札をテーブルに置いて立ち去ろうとすると、彼女の声が追いかけてきた。
「後悔することになるわよ」
振り返ると、両肘をテーブルに置いて頬杖をつきながら、瑠璃さんが憐れむような目で見ている。私はぺこりと会釈を返した。
「失礼します」