溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
「で、ここからは、俺の提案」
「提案?」
細長い脚を収納するように折りたたみ、彼は目の前であぐらをかいた。アルコールの匂いに混じって、かすかに瀬戸くんとは違う香りがする。油絵の匂いだろうか。
「俺が母親を説得してあげようか」
「え……」
彼は身を乗り出して、下から覗き込むように私を見た。口角を上げていても、目は笑っていない。何かを企むような目線に、私は警戒心を募らせる。
「あなたは……瀬戸くんの敵なの? 味方なの?」
「さあね。光希さん次第かな」
「私次第……?」
「俺さ、兄貴見てるとイライラすんだよね。流れに逆らって勝手に傷だらけになって。そんなになってまで欲しがる女がどういう人間なのか、興味がある。ね、ちょっと脱いでくれない?」
「はい?」
節の目立つ手が伸びてきて、思わず退いた。
「さっきから思ってたけど、光希さん、髪を下ろしてるとずいぶん雰囲気が変わるね。やたらと色っぽくてびっくりしたよ」
私は思わずパーカーのファスナーを上まで引き上げた。髪は結んでいた跡がついて、顎のあたりからパーマをかけたみたいに波打っている。
「俺、油絵制作してるんだ。兄貴をテーマに何作も。だから光希さんのことも描きたいなって思って。あんたが脱いでくれるんなら、俺が母親を説得してあげてもいいよ」