溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
「あいつ、何て言ってた? あ、ビール俺にもくれる?」
「うん」
私は立ち上がって冷蔵庫からビールの缶を取り出した。ついでにつまみになりそうな料理を小皿にうつす。「残り物だけど」とテーブルに置くと、彼は「十分だよ」と笑ってくれた。
私は彼の横に座り込み、うすはりのグラスにビールを注ぎ入れる。
「お母さんからの伝言で、やっぱり私じゃ釣り合わないから別れてくれって」
ビールに口をつけて、瀬戸くんは「まあそうくるか」と苦い顔をした。
「うちの両親、茨城出身なの。ふたりとも農家の出なんだけど、そのことも知ってたみたい」
「母さんが調べさせたのか……。悪い光希、家族の人にも嫌な思いをさせたかな」
瀬戸くんが疲れたようにうなだれて、私は首を振った。
「ううん。瀬戸くんのお母さんの立場からすれば、当然のことだと思うし……」
子どもの結婚相手を調べるなんて、資産家の家では特によくあることだろうと思う。それだけ親が子供を心配しているということであり、結婚が当人同士だけの問題ではないということなのだ。
「ほかには何か言ってたか? 大樹のやつ」
「ええと……」
あれは言うべきなのだろうか。言い淀んでいると、瀬戸くんが私の右手を掴んだ。