溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
「光希。ちゃんと全部言ってくれ」
瀬戸くんの目はとても澄んでいる。彼に見つめられると、胸を汚していた不安は跡形もなく消え去ってしまう。テーブルに落ちた水滴が、きれいに拭われるみたいだと思った。
「……お母さんに口利きをする代わりに、モデルにならないかと、提案されました」
「モデル?」
「油絵の……ヌードモデル」
なんとなく言いづらくて目を逸らしながら口にすると、右手に触れた彼の指が力なく落ちた。
「瀬戸くん?」
がくりと首を垂れたままで、広い肩が小刻みに震えている。
「あいつ……何考えてやがる」
低い声が聞こえて、瀬戸くんがめずらしく怒っているのだとわかった。
「光希、そんなの受けなくていいからな。わかってると思うけど」
「うん」
「あと、今度あいつが来ても部屋に入れるな。弟でも関係ない」
はあっと重い息を吐き出してがしがし頭を掻いたあと、彼は私を見た。どことなく恨めしげな視線にどきっとする。
「光希さ、俺のことは生吹って呼んで」
「え……」
「瀬戸だと、大樹のことを呼んでるようにも聞こえる」
拗ねたように目を逸らす彼に、思わず頬が熱くなった。