溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
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男兄弟の感覚ってよくわからない。
私にも弟と妹がいるけれど、八歳以上も離れていると姉弟というよりも子どもの面倒を見る感覚に近くて、弟たちと自分を比べて喜んだり悲しんだりすることはなかった。
それよりも同級生と比べて自分の時間が取れないことに不満を持っていたように思う。
瀬戸兄弟は四歳違いで、昔は仲がよかったらしい。あの大樹くんも、小さい頃はお兄ちゃん子で瀬戸くんのあとをちょこちょこ付いて回っていたという。
昨夜の寝物語――といっても布団は別々だったけれど――で彼が話してくれたところによれば、中学、高校と進学していくうちに兄弟で深い話をすることはなくなったらしい。
『俺と大樹は根本的に考え方が違うんだ。あいつはどんな状況でも楽しめる心の余裕があるんだよ。俺がいつもあくせくしてんのに、あいつはそんなに慌ててもしょうがいないよ兄貴って、いっつものんびりしててさ。器が大きいっていうか。俺を見て育ってるから、家の中でもうまく立ち回れるし』
フローリングに敷いた布団の中で、瀬戸くんは弟のことをそう語っていた。感情を混ぜないように淡々とした口調だった。
障害物にいちいちぶつかる兄と、うまく回避できる弟。自分たちのことをそんなふうにたとえていたけれど、私はそうは思わない。確かに、大樹くんのほうが要領はいいのかもしれないけれど……。