溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
でも、瀬戸くんとのことは言えないな……と申し訳なく思った。
芽衣ちゃんのことを信用していないわけじゃないけれど、瀬戸くんはただでさえ目立つ人だから、噂がどこから漏れだすかわからない。
「西尾先輩ってやっぱり頼りになるなぁ」
「え?」
皿に散らばったレタスをフォークで集めながら、彼女は眉を下げて小さく笑う。いつも溌溂としている芽衣ちゃんが、こんなふうにしんみりした表情を見せるのはめずらしい。
「チュウちゃんてば、先輩のことカッコイイ女性だってずーっと褒めてるんですよ。そりゃもう妬けるくらい。もしかして先輩のこと好きだったのかなぁって思うほど」
反応に迷っていると、彼女はくすっと笑ってほんの少し首を傾けた。どきっとするような、おとなっぽい仕草だ。
「先輩が頼りになるなんて、私だってイヤってほどわかってるし」
思いがけず胸が詰まる。芽衣ちゃんからしたら私なんてただの口うるさいお局だと思っていたのに、そんなふうに見ていてくれたなんて。
「私、先輩みたいに仕事できるようになりたいんで、いろいろとよろしくお願いします!」
「芽衣ちゃん……」
「だって、ほら、チュウちゃんがあんなんだから、私がしっかりしなきゃって……。やだなぁ、らしくないこと言ってると調子狂っちゃいますよね」
照れたように言って、彼女はごまかすように料理を口に運んだ。