溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~


屋上での始まり方からして強烈だった瀬戸くんとの時間が、あまりにも濃密で、めまぐるしくて、失恋の痛みなんていつのまにか吹っ飛んでしまっていた。
 
一時期は仕事に集中するのも大変で、自分がミスをしないだけで精いっぱいで後輩のフォローにまで手が回っていない状態だったというのに。
 
章介さんへの気持ちを消化できたわけではなかったのだ、と今になって気づく。
 
一時的に忘れていただけなのだ。だから本人が目の前に現れれば、胸に残っていた感情が暴れ出すのも当然かもしれない。
 
自分のなかにあるのに、気持ちはコントロールすることができない。
 
涙を我慢することはできても、悲しみを覚えること自体を回避する術はない。

もし誰しもが感情をコントロールできるのなら、失恋なんていう言葉はきっと、この世に生まれていないはずだ。
 
自分のなかで起きていることを認めたことで、いくらか落ち着いたけれど、気持ちは沈んだままだった。

今さら現れた昔の恋人のことで、瀬戸くんを煩わせたくない。
 
彼には知られないように気をつけないと――


< 130 / 205 >

この作品をシェア

pagetop