溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
どうしてこんなことに……。
業務に集中しようとしても、やっぱり考え始めてしまう。なにより差出人とその意図がわからないことが不気味だった。
それでも目の前の業務をこなしていると、携帯がメッセージを受信した。
【大丈夫か?】
瀬戸くんからだ。会社に寄らず直接営業先に向かった彼は、おそらく社用携帯に転送された例のメールを読んだのだ。
私はすぐさま【大丈夫です】と返信を打った。
ふうっと息を吐きだす。
とにかく仕事に集中しなきゃ。
資料を見ながらパワーポイントの画面を立ち上げたとき、「西尾くん」と声をかけられた。
振り返ると、部長が「ちょっと」と手招きして会議室に向かっていく。周囲の視線を感じながら、私は席を立った。
小会議室の電気を点けると、部長はため息をひとつついて椅子に座った。ゴルフ焼けだろうか、肌は浅黒く、自信をみなぎらせた鋭い双眸をしている。
部長といっても四十代の彼は、営業畑で昇進を果たし今のポジションに就いている。数少ない営業管理職のイスを勝ち取ったということは、当然ながらトップセールスマンとして業績を上げてきたということだ。
瀬戸くんと同じ大学のOBである彼は、ドアの前に立つ私をじろりと見上げた。
「おかしなメールが来ていたが、心当たりはあるか?」
どう答えたものか、私は目を伏せた。知らなかったとはいえ、事実だけを見れば私が不倫をしていたことは否定できない。