溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
「今は……関係していません」
どうにかそれだけ言うと、部長は机に肘をついて脚を組んだ。
「相手は社外の人間だし、取引相手でもない。普通ならイタズラだろうということで放っておくんだが、一斉メールとなると社員の士気にも関わると、人事のほうからせっつかれてね」
人事という言葉に頬が引きつる。部長は黒く茂った眉を上げた。
「ああ、誤解しないでくれ。たんに職場風紀の問題だよ。形だけ注意するってことで人事の担当者も納得している。記録に残すつもりもない」
精悍な顔が、思いがけず崩れる。
「君の仕事ぶりはわかっているつもりだ。瀬戸からもよく聞いてるよ。しばらくは周囲の目が気になるだろうが、今までと変わらずに業務に取り組んでほしい」
「は、はい」
「ただ……プライベートに口を出すつもりはないが、不安要素はちゃんと取り払っておきなさいよ」
重くなった口調に、私は神妙にうなずいた。
会議室を出ると、やっぱり視線を感じる。席に向かう部長のあとに続き、私も自分の席に座ってパソコンに向き直った。
資料を広げると、印刷された数字や言葉がするすると脳に流れ込んでくる感覚があった。部長のおかげで、気持ちが吹っ切れたのだ。
よし、と気合いを入れて、私はプレゼン資料の作成に没頭した。