溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~

「市原、かっこいいじゃん」
 
芽衣ちゃんがはっと目を開く。

「瀬戸さん……」
 
いつ外出先から帰ってきたのか、給湯室の入り口に瀬戸くんが立っていた。形のいい唇をにっと持ち上げて楽しげに笑っている。

「頼りになる後輩に、ひとつ相談がある」

「な、なんですか」
 
目をきらきらさせながら、芽衣ちゃんは進み出た。野村くんと付き合い始めたとはいえ、瀬戸くんに憧れる心も継続して持っているらしい。

「実は俺たち、一か月前から付き合ってるんだ」
 
肩を抱き寄せられて、私は固まった。正面で芽衣ちゃんも固まる。

「あ、これナイショな。市原にだけ、特別に打ち明けたんだから」
 
特別にという言葉をことさら強調して、彼は続けた。

「だから、何かあったときはフォロー、よろしく頼むよ」

「ま……任せてください!」
 
ドンと自らの胸を叩く芽衣ちゃんに、瀬戸くんはダメ押しの微笑みを見せる。

「ありがとう。期待してる」
 
芽衣ちゃんがふらふらとシンクにもたれた。ぷしゅーと魂が抜ける音が聞こえる。
 
見上げると、瀬戸くんはいたずらっぽい顔で私に片目を瞑ってみせた。



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