溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
パスタを二品とサラダをシェアして食事を終えると、瀬戸くんがごちそうしてくれた。
「居候の身だから、これくらいは」
その言葉に甘えて店を出ると、わずかに欠けた月が夜空に浮かんでいた。月が美しく見える季節だと、あらためて思う。
JR線に乗りこみ、都営線に乗り換える。電車に揺られるサラリーマンたちはみんな疲れた顔をしている。
「体、大丈夫?」
となりで吊革につかまる瀬戸くんに尋ねると、彼は不思議そうな顔をした。
「ずっと忙しそうだから」
私の言葉に「ああ」と表情を崩す。
「最近市原が頑張ってくれてるから、前よりちょっと楽になったよ」
「芽衣ちゃん、頑張ってるんだ?」
「自分からこうしましょうか、ああしましょうかって提案するようになったから」
後輩の頑張っている話を聞くと胸が温かくなる。
「先輩の指導の賜物だな」
優しく微笑まれて、思わず目を逸らした。瀬戸くんの微笑みって、心臓に悪い。
気が付くと、周囲の女性たちまでこぞって彼を見ているのだった。
駅から徒歩十分のマンションにたどり着き、エントランスのオートロックを解除する。エレベーターに乗りこむと、瀬戸くんが身体を軽くぶつけてきた。腰にするりと手が回される。
「ちょっと」
「電車のなかでは、ちゃんと我慢してただろ」
腕やら肩やらを触られて、くすぐったい。