溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
「聞いてくれ。妻とのあいだに愛はないんだ。本当だよ。俺が本当に結婚したかったのは光希、君なんだ」
喉の奥が痙攣して、息がうまく吸えない。
章介さんは薄い眉をつらそうに下げ、必死に語る。
「離れてみて確信したよ。やっぱり俺は光希じゃなきゃダメだったんだ。妻とは離婚したっていい。だから光希、もう一度俺と」
「ふざけるな!」
瀬戸くんが章介さんの胸倉をつかんだ。
「あんた、自分がどれだけ勝手なこと言ってるか分かってるのか!?」
「……君は?」
苦しげに眉をひそめ、章介さんが私と彼を交互に見る。
「俺は光希の婚約者だよ」
「婚約者……?」
ふたりがにらみ合う。私は章介さんのぬくもりが残る右手をぎゅっと握りしめた。
「光希、本当にこの男と……?」
小動物のような優しげな目に、悲痛な色がにじむ。
胸が痛んだ。ひどく傷つけられたけれど、それでも私は確かに、章介さんのことが好きだった。
「もう彼女に付きまとわないでくれ。今度現れたら警察を」
「生吹さん」
私の声に、瀬戸くんは言葉を切る。振り返った彼は眉間に皺を寄せていた。
「ごめんなさい。時間をくれない?」
「え……」
章介さんとは対照的な、はっきりとした二重の目が、傷ついたように歪む。
「彼とふたりで、話をさせてください」