溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
「悪いんだけど」と言って、瀬戸生吹は私に分厚いファイルを差し出した。何かトラブルでもあったのか、遠くで企画部の人がバタバタと動きはじめる。
「コレ、帰りがけに資料室に戻しといて」
「え……はい」
「おつかれ」
あっさりと言われ、拍子抜けした。
「お……つかれさまでした」
ノートパソコンに目を向けたまま、瀬戸生吹は右手を上げて応える。
人のいないフロアを抜け、エレベーターに乗り込んだ瞬間、恥ずかしさに頬が燃えた。
やっぱり、このあいだの屋上での出来事は、何かの間違いだったのだ。
自意識過剰だ、私。
一階で降り、資料室のドアを開ける。はあ、とため息をつきながら棚にファイルを戻したとき、背表紙に黄色い付箋が張り付いていることに気がついた。
「なんだろ」
手に取って見る。
書かれていた文字に、心臓が大きく跳ねた。
【駅で待ってて 瀬戸】