溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
背中を丸めた彼は、すがりつくように私の右手を引き、額をつける。まるで祈っているみたいだ。
でも、私の薬指にはもう、指輪はない。
「私、章介さんが初恋だった」
彼がはっと顔を上げる。八歳年上の彼は三十六歳になるはずなのに、ずいぶん幼く見える。
「大切な初恋が実って嬉しかったし、章介さんと過ごした八年間は、すごく充実した時間だった」
一時期はからっぽになってしまったと恨んで、漫画に逃げることしかできなかったけれど。
「あなたと過ごした時間のおかげで、私は大人の目線を得ることができたし、人として成長できたと思う」
「光希……」
章介さんの目に、さっと光が差す。希望を見出した瞳から目を逸らして、私は彼のぬくもりから静かに右手を引き抜いた。
「でも、そう思えるようになったのは、ぜんぶ瀬戸くんのおかげなの」
屋上で最初に言葉を交わした瞬間から、彼は私を必要としてくれた。私の心に寄り添い、空洞を埋めて、私という存在に意味を与えてくれた。
誰かのために存在する意味を、教えてくれた。