溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
玄関の前で立ち止まり、チャイムを押す。しばらく待ったけれど反応がない。
お風呂にでも入ってるのかな。カバンから鍵を取り出して、玄関の扉を開いた。
あれ、と思う。部屋の中は真っ暗なままだった。
玄関脇のスイッチを押して電気を点ける。靴を脱ぎ、キッチンの前を抜けて八畳の部屋に入った。
「生吹さん?」
誰もいなかった。しんと静まり返った部屋には虫の声も聞こえない。
洗面所もお風呂場も空っぽで、どこかに隠れているのかとベランダやクローゼットも確認したけれど、彼の姿はどこにもなかった。
「なんで……?」
ふと違和感に気づく。
部屋の隅に置いてあったボストンバッグがなくなっている。私は慌てて携帯を取り出した。
電話をかけても、すぐに留守番電話に切り替わってしまう。仕方なく、メッセージを打とうとしたとき、テーブルの上に黄色い付箋が張られていることに気づいてあわてて取り上げた。
そこには一行だけ、走り書きが残されていた。
【しばらく家に帰ります 生吹】