溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~

芽衣ちゃんの鋭い指摘に、私は唇を結んだ。
 
そうだ。瀬戸くんは忙しく働くことで母親の呪縛から逃れてきたのだ。

でも、こんなふうに働いていたら、いつまで身体がもつかわからない。不得手ではないとはいえ、彼が本当にやりたい仕事は、営業ではないのだし……。
 
どうにかしなきゃ、と考えているうちに、頭上で午後の就業開始チャイムが鳴った。



結局この日、会社を出るまで瀬戸くんの姿を見ることはできなかった。
 
業務を終えてエントランスを抜けると、ひんやりした空気が頬を撫でた。まだコートを着るには早いけれど、そろそろ冬物を出さないといけない。
 
単身者用の部屋だし、二人分の衣類を置くには、やっぱりあのクローゼットじゃ小さすぎるかな。
 
考えながら歩道を歩き出すと、突然目の前に人が立ちふさがった。
 
夜空の下でも映える赤い髪。スカジャン風のブルゾンに柄Tシャツとジーンズといった出で立ちのその人は、いつかの柄の悪そうな青年だ。

「あなた、瑠璃さんの……」
 
彼は無言でうなずき、傍らの道路を指さす。街灯に浮き上がっているのは、国産の高級車だった。青年は後部座席のドアを開く。

「え、乗れって?」
 
断ろうとした瞬間、座席の奥から声が聞こえた。

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