溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
魂が触れ合うような抱擁に目を閉じる。背中に感じるぬくもりは、まぎれもなく瀬戸くんのものだ。
「ちょ、ちょっと、人前で、破廉恥よ!」
瑠璃さんが顔を真っ赤にして叫ぶ。すると瀬戸くんが私を開放して前に進み出た。瑠璃さんが頬をこわばらせる。
「瑠璃、お前だろ。光希のカバンに封筒を忍ばせたのは」
「な、な、なんでそんなこと言うの、ひどい!」
明らかに動揺した彼女を見て、瀬戸くんは息をつく。
「お前から光希が手切れ金を受け取ったって聞いたとき、もっと疑うべきだったよ」
余裕なさすぎだったな俺、と言って、彼は私に向き直る。
「ごめん、光希」
私は瀬戸くんの母親に車で自宅に送ってもらった日のことを思い出した。
後部座席でお金の入った封筒を見せられ、それを断り、車を降りた。そして、マンションの前で私に駆け寄ってきた瑠璃さん。私に顔を寄せて、イタズラメールのことを示唆した。……あのときか。
ため息がこぼれた。
「お返ししようと思って、持ってきたんです」
私はバッグから封筒を取り出した。厚みのあるそれを、ガラステーブルの上に置く。
「手切れ金なんて私、受け取ってないから」
振り返ると、瀬戸くんは「わかってる」と私の手を握り締めた。
「光希のことを疑ったわけじゃないんだけど、元カレの登場とか重要な仕事が重なったりとかで、ゆっくり考える時間がなくて……つい瑠璃の言葉を真に受けた」
瑠璃さんがびくりと小さな肩を揺らした。