溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~

ちらりと正面をのぞき見る。

瀬戸くんのお父さんは黙ったままだった。成り行きを見守る審判のように、静かに、でも難しい顔で私たちを見ている。

何科なのかはわからないけれど、隣の駅で病院をやっているという彼は、自身の健康にも気を遣っているに違いなかった。私の父とそう年齢は変わらないはずなのに、中年太りの気配もなく、とても若々しい。

私はこっそり息を吸って、ゆっくりと吐きだした。

「うちの家系は……確かに、家柄なんてものはありません」
 
私が話し出すと、全員の目が集まった。心配そうな顔の瀬戸くんと、眉間に皺を寄せている杏子さん。そして、感情を見せないお父さん――。

「でも、みんな丈夫なんです」

「は?」と杏子さんの口が開いた。私は構わずに続ける。 

「丈夫というより頑丈です。お調べになったのならご存知かと思いますが、私は小中高と皆勤賞で会社も無遅刻無欠勤。風邪なんてめったに引かないどころか、大学の食堂で食中毒騒ぎがあったときも、腹痛を訴えて病院に行く友人たちを尻目に私だけ平然と講義を受けていました」

「み、光希?」
 
突然の独白に面食らったのか、瀬戸くんが不安げに声をかけてくる。私は彼に向かって大丈夫、とうなずきかけた。

「うちの家系はとにかく骨からして太いんです。祖父母も両親も病院知らずだし、弟に至っては柔道部なのに打ち身ひとつ作らない。曾祖父母は百歳を超えてるのに、どっちもぴんぴんしてます」
 
あっけにとられている三人を順番に見やり、私は言った。

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