溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
「西尾家には家柄はありませんが、先祖代々受け継いだ丈夫な身体があります」
「な……」
あんぐりと口を開けている杏子さんの横で、ロマンスグレーの父親が力強くうなずく。
「風邪を引かないということは、免疫系のはたらきが活発なんだろうね。確かに、白血球のはたらきには遺伝的な素因が認められているから――」
「あなたは黙ってて」
お母さんがたしなめるように夫を見た。それから彼女は私に鋭い視線を向ける。
「何を言い出すかと思えば……。うちの親族には大学病院に勤めてる医者だって何人もいるのよ。人脈さえあれば多少病気をしたところで何の問題もないわ」
「そうでしょうか」
杏子さんの切れ長の目がすっと細くなる。敵を観察するような冷めた目に腰が引けそうだった。
でも、もう少しだ。彼女の隣に座っている瀬戸家の主人は、先ほどとは明らかに顔つきが違っている。
ちらりと横を見ると、瀬戸くんの心配そうな顔が目に入った。大丈夫、ともう一度彼にうなずきかけて私は唇を湿らせた。
「病気やケガをしてからでは、費用や身体への負担がかかりますし、手遅れになることだってあるかもしれない」
「あなた、なにを」
「私、人生最大の財産は、健康だと思うんです」
お正月やお盆に田舎に帰ったとき、祖父母が口癖のように言うセリフがある。
人間がもっとも大事にすべきなのは、家族と、自分自身の身体なのだと。
実際に、茨城に住んでいる祖父母も曾祖父母も、いつも周囲からお元気ですねと羨ましがられているらしい。