溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
「そう、大事だ。健康は大事だぞ」
医者である瀬戸家の主人が大きくうなずいた。それを確認し、私は畳み掛けるように口にする。
「瀬戸家の血に、私の丈夫な血が混じっても、悪いことはないと思います」
「そのとおりだ!」
瀬戸くんのお父さんが立ち上がった。半袖のポロシャツからのぞいた逞しい腕を、握手を求めるように私に差し出す。
「気に入った。君、光希さんといったね」
お父さんの声は、瀬戸くんの声をそのまま低くしたような音だった。どっしりとした安定感のある声と厚みのある大きな手に、こわばっていた気持ちがほぐれていく。
「あなた、何を言って」
抗議しようとするお母さんを振り返って、彼は鷹揚に笑った。
「いい娘さんじゃないか杏子。生吹もぞっこんのようだし。何の問題がある?」
「だって……」
「お願いだ、母さん」
瀬戸くんが立ち上がり、私もそれに倣った。ふたりで頭を下げる。
許してもらえるまではこの体勢を解かない。瀬戸くんの意思が伝わってきて、私も深く頭を垂れた。
応接間に時計の音が響いている。
しばらく沈黙が続いたあと、はあっと深いため息が聞こえた。