溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
「……わかったわよ」
瀬戸くんとふたりで顔を上げる。根負けしたというふうに、杏子さんは疲れた顔をしていた。
「母さん、それじゃあ……」
「でも」
目を輝かせる瀬戸くんを一瞥して、彼女は鋭い視線で私を見る。
「まだ結婚を許したわけじゃありませんから。お見合い相手のお嬢さんたちと比べたら天と地ほどの差があるけど、仕方がないからあなたにもその資格を与えてあげるだけよ」
瀬戸家の嫁としてふさわしい振る舞いができるかどうか。
杏子さんは家柄以外の部分で私を見定めることにしてくれたらしい。
「そんなに言い張るんだから、私を納得させられるのよね?」
蛇のような目でじろりと睨まれて気圧されながら、どうにかうなずいた。
もしかして、想像以上に大変なことになってしまったのだろうか。
知らないうちに手が震えていた。誤魔化すように両手を合わせ握り締めていると、横から伸びてきた大きな手にふわりと拳を包まれた。
「光希、一緒にがんばろうな」
瀬戸くんの顔に浮かんだのは、これまで見たことがないような弾ける笑顔だった。
溶け残っていた雪が太陽に完全に溶かされるように、心にわだかまっていたものがすべて消し飛ぶ。私は彼の手を握り返した。
ぬくもりが伝わるのと同時に、大きな壁を乗り越えたという達成感がじわりと広がっていく。
不安を押しのけて喜びが湧きあがってくる。
瀬戸くんとなら、私はきっと頑張れると思った。
この人と一緒になるために、私は私にできることを全力でやろう。
そう思える自分が、なんだか誇らしかった。