溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
「お医者さんだから、健康のことには敏感かなと思って……」
夕食時、楽しそうにお酒を飲んでいた瀬戸家の主人は、最初の厳格そうだった雰囲気とは打って変わって朗らかで軽いジョークを飛ばしたりと、とても楽しい人だった。
杏子さんの毒舌を大きな笑い声で包んでしまうおおらかさは、息子と母親の関係でギスギスしがちな瀬戸家を根幹から明るくしていた。
夕食を形ばかり頂きながら、さすが大黒柱だと思った。瀬戸家では母親の杏子さんがすべてを牛耳っているように見えて、その実父親である彼があらゆる決定権を握っているのかもしれない。
実際、瀬戸くんが仕事を続けられるように、お父さんは杏子さんを説得してくれたのだ。
「これからがまた大変だな」
「うん……」
婚約者候補として認められた私は、ことあるごとに瀬戸家に顔を出すことになる。家族の集まりや週末の食事会はもちろん、杏子さんの習い事に同伴する機会もあるだろうということだ。
「私、大丈夫かな」
ひとまず瀬戸くんのお見合いはストップするけれど、杏子さんのことだから、いつ私に見切りをつけて別の女性を息子に紹介し始めるかわからない。
ため息がこぼれた。先のことを考えれば考えるほど、胸が重たくなっていく。
「光希は機転が利くし、普段通りにしてれば平気だよ。わからないことは堂々とわからないって言えばいいし。何一つ取り繕う必要はないから」