溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
「生吹の馬鹿! お嫁さんにしてくれるって約束したのに!」
驚いて振り返ると、唖然としている瀬戸くんと目が合った。彼ははっとしたように瑠璃さんに向き直る。
「約束って、小さいときの話だろ」
あわてている彼を見やりながら、大樹くんがくすくす笑った。
「瑠璃が幼稚園のときにさ、園で手紙を書きましょうっていう催しがあって、瑠璃はお嫁さんにしてって手紙を書いて兄貴に渡したんだよ」
当時小学五年生だった瀬戸くんは、幼なじみの彼女からの手紙を受け取り、「瑠璃が大人になったらね」と優しく答えたらしい。
「だって子どもの頃の話なんて、普通真面目に受け取らないだろ……」
「ひ、ひどいわ生吹。私のことは遊びだったのね」
「おい、誤解を招くような言い方をするなよ」
瀬戸くんがめずらしくあたふたしている。その様子を大樹くんは楽しんでいるようだった。
「兄貴は瑠璃のことが苦手なんだよ。あしらい方が下手でさ」
「子供のころの出来事でも、私は本気だったのよ」
瑠璃さんから泣きそうな声で言われて、瀬戸くんはぐっと言葉に詰まった。重いため息をつく。
「ごめんな、瑠璃」
瀬戸くんが真剣な表情を浮かべて、廊下の空気が張りつめた。
「瑠璃のことは可愛いと思ってるよ。でもそれは妹みたいな感じで、恋人にしたいわけじゃない。俺が一緒にいたいのは光希だから」
「う、うわあああん」
突然瑠璃さんが叫んだ。泣き声を上げながら部屋を飛び出すかと思いきや、携帯を取り出してどこかにかけ始める。