溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
そもそも瀬戸生吹は自分がどれだけ仕事を抱え込んでいるのかを周囲に見せないタイプなのだ。よほど注意して見ていなければ、彼がどれだけ消耗しているのか気づけない。これまでの私がそうだったように。
芽衣ちゃんも、今日のことで瀬戸くんに寄りかかりすぎていた自分に気づいたかもしれない。
「私、私、頑張りますから。瀬戸さんに迷惑かけないように」
両手でビールのコップを抱えて泣きそうな声をあげる彼女に、私は水のグラスを渡す。
「芽衣ちゃん、帰れなくなると困るから、今日はあんまり飲まないほうがいいよ」
「うう、はい」
「明日から出かける予定があるんじゃないの? 十分反省したんだから、もう楽しいことを考えましょう」
連休の予定を思い出したのか、彼女は大きく頷いた。
「明日はスピマスのライブに行きます」
男性アイドルグループの名前をあげ、芽衣ちゃんは牛タンの角煮を頬張る。涙のあとが残った頬を動かし、「おいひいい」と感嘆の声を漏らした。
瀬戸くんが薄く笑って、私を見る。
「西尾も、冷めないうちに食べな」
「うん。いただきます」
テーブルに並んだ皿からステーキみたいに分厚い牛タン焼きを一枚、口に運ぶ。