溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
・
東京駅に着いたのは午後十一時をまわった頃だった。こんな時間にもかかわらずコンコースは人でごった返している。明日から連休のせいか、キャリーケースを引きずって歩く人の姿も目立った。
JRの改札を抜け、地下鉄の改札前で芽衣ちゃんが振り返る。
「今日は本当に、申し訳ありませんでした」
折った腰の深さから、彼女の反省度合いが測れるようだ。瀬戸くんがかすかに微笑む。
「遅くなって悪かったな。今日は帰ってゆっくり休んで」
「はい」
優しい言葉に感激したらしく、目を潤ませながら彼女は改札をくぐっていく。入れ違いに大勢の人の波が吐き出されてきた。押されるようにして、私たちは壁際へと移動する。
「えっと、私は都営線だけど、瀬戸くんは」
目があった瞬間、広い胸に閉じ込められた。いきなり近づいた距離に、呼吸を忘れる。
「せ、瀬戸くん!?」
「今日は助かったよ……ありがとう、光希」
耳元で囁かれ、背中がしびれる。顔が一気に燃え上がった。
「あ、あ、あの」