溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
瀬戸くんにぎゅっと抱きしめられて、声を出せなくなる。密着度の高さに私は恐慌状態に陥る寸前だった。
地下道の隅とはいえ、人通りは激しい。たくさんの視線を受けながら「ちょっと」と彼の背中をばんばん叩く。異変を感じたのはそのときだった。
「瀬戸、くん?」
ぐったりと私にのしかかった身体が、熱い。
「瀬戸くん!」
両手を伸ばして顔に触れると、明らかに熱があった。額だけでなく、頬も首も熱い。
「び、病院に」
彼を支えながら、携帯を取り出そうとカバンに手を突っ込んだとき、腕を押さられた。
「ちょっと疲れが出ただけだと思うから、平気」
そう言う彼の顔色はやっぱり優れない。
「俺も、都営線から乗り換えてく」
歩き出す彼はふらついていて、私はとっさに彼の腕を支えた。
「全然平気そうじゃないです。ご自宅まで送りますから。どこの駅ですか」
「いや、いいよ」
ふらふらと歩き出す彼に肩を貸しながら、どうにか自宅の場所を聞きだそうとしたけれど、なかなか答えない。
一緒に都営線に乗りこんでも、彼はぐったりしたまま話をするのもつらそうだった。さっきまで普通に歩いていたように見えたけど、よほど我慢をしていたらしい。