溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
ベッドに横たわる彼を見て、仕方ないじゃない、と自分に言い聞かせる。自宅の場所をどうしても言わないんだから。熱で半分意識のない人間を、ひとりで帰すわけにはいかない。
彼に薬を飲ませ、私はベッド脇に座りこんだ。苦しげに息をしている彼の額に冷却シートを貼りつける。それだけで、ふだん怜悧な表情で仕事をこなしている敏腕営業マンとは思えないほど、幼い印象になった。
頬にそっと触れる。肉の薄い精悍な顔をしながら、この人は内面にどんな不安を抱えているのだろうか。
気配があった。自分のなかで、感情が動きだそうとしている。
目をつぶり、波が静まるのを待つようにじっと堪える。感情を揺らす大きな潮は、いまにも私をのみ込もうとしている。
その力は巨大で、少し隙を見せただけできっと遠くまでさらわれる。
思い切って身を任せてしまえば、気持ちは楽になるのかもしれない。
でも、きっと傷口も開く。
瀬戸くんと違い一重瞼のすっきりした顔を思い浮かべ、胸が苦しくなった。
もう、あんな目に遭うのはごめんだ。
瀬戸生吹の苦しげで、それでいて美しさを損なわない寝顔を見つめながら、長いため息がこぼれた。