溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
自分の意識がないうちに抱きかかえられたなんて、恥ずかしすぎる。顔の火照りをごまかすように、私はあたふたと言葉を続ける。
「ね、熱は、下がったんですか?」
「おかげさまで」
「そうですか。よかった」
ほっと胸をなでおろしたとき、彼の手に漫画本があることに気づいた。
ベッドの下に積んであったものを見つけられてしまったらしい。私の視線に気づき、彼は手元に目を落とす。
「意外だったよ。漫画好きなんだ?」
「最近、ハマったんです……」
瀬戸生吹が手にしているのは、青年誌で連載されている人気漫画の単行本で、ピアノを弾く青年と目の見えない少女が織りなす恋物語だ。
「ふうん」
彼は、美しい朝陽の景色が描かれた表紙を眺めながら、私のすぐそばに座り直した。ぎしりとベッドが軋むと同時に、私の心臓も音を立てる。
「面白いの? これ」
「面白いです。漫画と侮るなかれ、ですよ。読んでるといつのまにか引き込まれてるんです」
「……へえ」
彼は私の言葉にというよりは、私の口調の熱さに驚いたようだった。自分でも、言葉に熱がこもっていくのがわかる。
「絵がきれいだし、なにより登場人物の感情がむき出しで、主人公と一緒に、感動したり怒ったり泣いたりしちゃうんです。つらいことを忘れて世界に入りこんで、気が付くと、気持ちがすっきりしてる」