溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
少なくとも私は、漫画の世界にどっぷり入りこんだおかげで、嫌なことを忘れることができた。
たんに現実世界から逃げただけにも思えるけれど、それは気持ちを整理する上で絶対に必要な時間だった。
「そうだ、瀬戸くんも漫画を読めばいいんですよ。これ、貸しますから。きっと死にたい気持ちなんて忘れちゃうくらい、のめり込みます」
振り向くと、瀬戸生吹の顔がすぐそこにあった。目線がぶつかって、時間が止まる。形のいい唇が小さく開く。
「俺は、光希にのめり込みたい」
息が詰まった。甘く掠れた声は私の決意を揺るがしそうなほど強く、全身に絡みつく。
彼の長い指が、肩下に流れた私の髪をつまみあげた。
「結んでるのもいいけど、下ろしてると色気がすごいな」
固まっている私をまっすぐ見つめて、彼は言った。
「シャワー、借りていい?」
「へ……?」
「熱は引いたんだけど、汗でベタベタで」
「あ、はい、どうぞ」
私は急いでベッドを立った。
彼をバスルームに案内し、タオルを押し付けるようにして部屋に戻る。彼がシャワーを浴びているあいだに、パジャマからロング丈のワンピースに着替えた。