溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
朝の光のなかで八畳の室内を見ると、夕べは気づかなかった細かな部分が気になってくる。
放り出してあった雑誌を棚にしまったり、ベランダに布団を干したり、こまごま動き回っているあいだも、私の意識はずっとバスルームの水音に引っ張られていた。
そこにいるのが瀬戸生吹だと思うと、妙に胸が騒ぐ。それと同時に、古い傷が痛んだ。
心に暗い影を落としそうなものは二ヶ月前にすべて処分したはずなのに、捨てきれなかった何かがまだ胸の奥深い部分に巣食っている気がする。
そのとき、洗面所の扉が勢いよく開いた。現れた瀬戸生吹の姿に悲鳴を上げそうになる。腰にバスタオルを巻いただけの彼が、さっぱりした顔で近づいてきた。
「風呂、ありがとな。シャンプーとか適当に使っちゃったけど」
「ああ、はい。ていうかこれ、これ着てください!」
クローゼットから取り出したルームウェアを差し出すと、彼の眉間に皺が寄る。
「なんで男物の服があるんだよ。……元カレの?」
「ちがいます!」
思った以上に大きな声が出て、私は顔を逸らした。一瞬目に入った瀬戸生吹の瞳は、びっくりしたように丸まっていた。
「弟のです。たまに泊まりにくるので」
「ふうん?」