溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
私の肩をつかみ、彼は覆いかぶさるように迫ってくる。
「仮にも、付き合ってるわけだし、俺たち」
「付き合ってな――」
「――光希。目、閉じて」
抵抗する前にあごを持ち上げられた。至近距離で見つめられ、身動きが取れなくなる。
「や、ま、待って」
彼が目を閉じる。顔が近づいて、唇が重なる、直前――
ぐううと音が鳴った。
瀬戸生吹が固まる。1LDKの部屋に沈黙が漂い、私はこらえきれず噴き出した。
「……そんなに笑うなよ」
「だ、だって、そんなにカッコつけててお腹鳴るって……」
私を開放して、瀬戸生吹はベッドに腰掛けた。
「昨日の食事は牛タンだけだったから。気が抜けたら、急に腹減ってきた」
「なにか作りますね。やっぱりおかゆとかがいいのかな?」
「いや、ふつうに食いたい」
「とりあえず、消化に悪い脂ものは避けましょう」
納豆にだし巻き卵にひじきのいため煮、それから作りおきの煮物を小鉢に移すと、品数だけは見栄えのする和朝食の体裁が整った。二人掛けのダイニングテーブルに着いた瀬戸生吹が目をまたたく。