溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
「瀬戸くんは兄弟は?」
「俺も弟がいる」
「そうなんですか。男兄弟だとやっぱり似てるんですか?」
「全然似てない。……あいつは、俺よりずっと、要領がいいよ」
彼の表情が、少しだけ硬くなった気がした。どことなく踏み込まれたくないような気配を感じて、私はそれ以上質問するのをやめた。
びっくりするくらい甘い表情で迫ってきたかと思えば、ふいに殻に閉じこもるような暗い顔を見せたりする。
そんな瀬戸生吹のペースに巻き込まれて忘れがちになるけれど、彼は何かを抱えているのだ。最初は仕事がつらいのかと思ったけれど、どうもそれだけじゃないような気がする。
『西尾と一緒なら渡り合えるのにって――』
いつかの言葉を思い出した。
彼はいったいに何に追い詰められているのだろう。
……屋上から、飛び降りようとするくらいに。
食べ終わってから、私は流し台に立って洗い桶に食器をつけた。ひとりで食事をしたときの倍以上の皿の数に、ちょっと見栄を張りすぎたかも、と後悔する。
隣に気配を感じて振り返ると、瀬戸くんがだぼだぼの袖をまくり直していた。