溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
あわてている私をよそに、瀬戸くんは冷蔵庫に寄りかかって余裕たっぷりの表情を見せる。
「そういえば、昨日はアイビーマートのフォロー、ありがとうな。本当に助かったよ」
「え、い、いえ」
彼が噴き出して、私ははっとした。
「い、今のは敬語じゃない!」
「ふうん、まあいいや」
キッチンから出ていく背中が、小刻みに揺れている。こっちがこんなに焦っているというのに、彼は完全に楽しんでいる様子だ。
こうなったら絶対に敬語は使わない!
そう心に決めて濡れた手をぬぐっていると、瀬戸くんがラグに座って漫画本を拾い上げた。ぱらぱらとページを捲りながら言う。
「光希のおすすめの漫画ってどれ?」
読む気になったのだろうか。
不用意に発言しないよう口を結んだまま彼の前を通り過ぎ、私はベッド脇に積んであるダンボールを開いた。
文庫サイズからワイド版まで漫画がぎっしり詰まった段ボールは、クローゼットの中にもう二箱ある。少女漫画から少年漫画、青年漫画に至るまで、一通りの名作は取り揃えてあった。
漫画好きの弟に教えてもらい、ここ一ヶ月で買い集めたものだ。
「これとか。社会人の主人公が会社で頑張る話で、こっちはちょっとグロテスクだけど、世界観が凄くて、一気読みできちゃう」
まるで漫画のたたき売りのようにテーブルに並べていくと、瀬戸くんはそのなかの一冊を手に取った。表紙を眺め、ひっくり返して裏表紙を確認し、つぶやく。